【2022年2月1日加筆修正】
こんにちは! 元テレビマンで二児の母、じゅりちゃんです。
皆さん、2年前の夏、7年ぶりに私たちを熱くさせたドラマ「半沢直樹」覚えていらっしゃいますか。
私超好きだったんですよ。
皆さんもそうだったのではないでしょうか。
なぜ、半沢直樹は、視聴者を惹きつけてやまないのか。
テンポの良さ。勧善懲悪のわかりやすいストーリー。たまに結構スレスレなことをして、ヒーロー感を出しながらも、あくまでいちサラリーマンという半沢直樹の立場…。
理由はたっっっっくさんあると思うのですが、私は一つの仮説を立てました。
それは、顔面です。
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仮説
半沢直樹は、クロースアップ(顔に寄ったカット)が、とても多い。
よって、人々を惹きつけてやまない。
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これを、検証していきます。
しばし、お時間拝借できれば幸甚です。
目次
目は口ほどに物を言い、眼力は人を惹きつける
半沢直樹はクロースアップが多いのか検証
半沢直樹のドラマを観ていて皆さん感じるのは、「顔面のカットが多い」ということではないでしょうか。
首から上のサイズの映像を「クロースアップ」といい、テレビ業界では「ヨリ(寄り)」と呼びます。
(もしかしたらバラエティだけかも。ドラマやったことなくて…アハハ…)
この記事では、呼び慣れた「ヨリ」で統一させていただきますね。
ヨリが使われるときは、流れの上で、重要なところです。
会話の盛り上がるところ。愛の告白の瞬間。夫の秘密を知ったとき。
だから、視聴者の目線も自然と釘付けになります。
これが自然と身についている私たちは、ヨリを多用している半沢直樹から、目が離せないんじゃないか。
ここで気になるのが、歌舞伎俳優陣。
香川照之さん。市川猿之助さん。片岡愛之助さん。尾上松也さん。錚々たる面々。
歌舞伎俳優の眼光が鋭すぎるから、ヨリが多いと感じているだけなんじゃないのか?
本当は、そんなに多くないのかもしれない。
【仮説A】
ヨリのカット数が他のドラマに比べて多い。
【仮説B】
ヨリのカット数自体は多くなく、歌舞伎俳優の芝居の濃さに目が離せない。
後半戦の帝国航空編スタートである「半沢直樹第5話」
対するは、同じ福澤克雄監督の、人気サラリーマンドラマ「下町ロケット第6話」(こちらも後半戦のスタート回)
両者を比較してみます。
あくまで私調べであり、誤差は生温かい目で見守っていただければ幸いです。
仮説の検証結果
- ヨリ→首から上
- バスト→胸から上
- ミドル→膝や腰あたりから上
- ロング→全身や、それ以上に広い画
- 人物以外→物・製品

半沢直樹第5話と、下町ロケット第6話の比較
結論。
予想通り、ヨリは多かった。
細かく見ていきましょう。
- 半沢直樹は、ヨリのカット数が、下町ロケットの約2倍。
- 各々の総カット数に占める割合は、31%と、半沢直樹は下町ロケットより10%も高い。
- 逆に、下町ロケットでは、ロングショット(広い画)と、人物以外の物の画が多い。
理由を考えます。
2つのドラマの大きな違い
下町ロケットの場合
- 工場や田んぼがメインとなるため、広い画が多くなる。
- 製造業のため、製品のカットが多くなる。
- やり返すべき相手が半沢ほど多くない。
半沢直樹の場合
- 帝国航空は輸送業だが、経営立て直しがメインのため、基本会議室で進行。広い画はあまり必要がない。
- 金融業のため、基本的に製品がない。
- 周りが敵だらけで、しょっちゅうやり返さないといけない。
そして、半沢直樹は、総カット数そのものが、下町ロケットの約1.3倍となっています。
これは、ヨリのカットでの会話劇が多いので、テンポ良くするために、カットバックが増えるからではないかと推測します。
※カットバック=人物AとBのカットを交互に切り替えること。
あるいは、感染症対策を行いながら撮影を進めないといけないため、ヨリが多くなっている可能性もあります。
今年ならではの撮影方法の可能性
本来なら、シーズン1と2を見比べなければ判断できないので、ここからは、完全に私の推測になることを、ご承知おきください。
1枚の画の中に複数人を入れて会話させる場合、役者同士の距離感はどうしても近くなります。
飛沫感染を防ぐために、ソーシャルディスタンスを取りたいのだけど、2m離れて会話する画ばかりになったんじゃ、ちょっと緊張感が足りなくなってしまいそう…。
そこで逆に、カメラが寄ったのではないかと思うのです。
ヨリにして、向き合っている人物がフレームに入らないようにしてしまえば、2人の距離はリアルよりも離すことができます。
映り込まないように、アクリル板を立てておくことも可能なんじゃないかな。
(まあ、タクシーに3人密集して問い詰めるシーンもあるので、何とも言えないのですが…。)
そして、ヨリのカットが増えたことで、アレが楽しめるようになったのかもしれません。
歌舞伎俳優陣の顔芸
カマキリ先生😂😂😂
日曜日の副業お疲れ様でございます#半沢直樹 pic.twitter.com/gMqTKhDEFv— じゅりちゃん🎥動くストーリー|動画制作 (@jymkw) August 21, 2020
コレです。
大和田さんは明らかに、前シーズンよりも顔で遊んでいる気がします。
結果から導き出された考察
半沢直樹は、確かにヨリのカット数が多い。
元々の眼力のある歌舞伎俳優陣が、顔芸しやすい環境であり、視聴者はますます目を離すことができない。
シーズン1と2のカットの割合も比べてみたいですが、それはまたの機会に…。
さて、次の項では、会話劇を撮るときの決まりについてお話しますね。
会話劇を撮るときの大原則「イマジナリーライン」
ヨリが多い半沢直樹に重要な、イマジナリーライン
撮影用語に、「イマジナリーライン(想像上の線)」というものがあります。
会話劇を撮るときは、この線を越えないようにしなければなりません。

俯瞰(真上)から見た図です。
イマジナリーラインとはつまり、スクリーンやテレビ画面に見立てて、2人の人間の立ち位置をはっきりさせるための、架空の直線です。(線より、面と言うべきか。)
イマジナリーラインの向こう側(181〜359度)にカメラが越えてしまった場合、人物の位置が逆転したように見えてしまい、視聴者が混乱します。
会話劇のシーンでは、右寄りに向いている人と、左寄りを向いている人は原則固定されます。
これは、イマジナリーラインを守らなければならないからです。
電話のシーンで、2人が同じ空間にいなかったとしても、一方は右、もう一方は左を向いていることが多いです。
2人が同じ方向を向いてしまうと、会話をしていないように見えてしまうからです。
イマジナリーのイマジナリーみたいな感じでしょうか…(なんのこっちゃ)
イマジナリーラインを越えてしまうと、視聴者が混乱しやすいので、よほど意味を持たない限りは守りましょう。
余計なことが気になって、ストーリーに集中してもらえないのはもったいないです。
となると、3人以上が円卓を囲んでいるシーンだとどうなるか、気になりますよね。
この場合はよく、イマジナリーラインを変えながら会話が進んでいきます。
イマジナリーラインが変わるときには、以下のような手法で、位置を把握できるようになっています。
- 複数人が一緒の広めのカットを挟む。
- 向き合っている人物の肩越しに撮る。
イマジナリーラインを学ぶには?
ちなみに、イマジナリーラインのスゴイ映画で有名なものは、
十二人の怒れる男(1957年/米国)
なんてったってロングテーブル囲んで12人ですから!
私の稚拙な説明よりも、この映画を見れば解釈が一発でわかりますよ!
フィルムスクールでイマジナリーラインの授業のときに、先生からオススメされました。
3枚とも、IMDb:十二人の怒れる男から引用
殺人事件の容疑者の有罪・無罪を巡る陪審員たちの密室劇です。
古い白黒映画ですが、ワン・シチュエーション・ドラマの勉強には最高の映画。
テーマ自体、とても考えさせられるので、まだの方はぜひ観てみてくださいね!
改めてみたらスゴイ良質な「妄想ムービー」だったという発見がありました!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
私見が多分に入ってしまったところがありますが、こういう仮説を立てながら見る楽しみがあるのも、私が半沢直樹を好きな理由の一つです!
下町ロケットと合わせて、約3時間かかってカット数を数えたからと言って、決して暇なわけじゃないんですよ〜〜!(言い訳ですけど)
こんなしょうもないことをやりましたが、私、一応ハリウッドで本格的に映画製作を学んだ硬派な映像クリエイターです。
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顔面の数は大切です。でも数だけじゃないんです。続きは記事で。