作り手の思いを届ける翻訳家として『愛と想像力』を胸に、広報・PR、新規事業開発、販促、企画・制作などに15年ほど携わっているKEIKOです。今回は、国際ブランディングディレクターを養成する『DESIGNART研究所』について、単なる“ビジネススクール”という枠にとどまらない静かに躍動する魅力についてご紹介します。
近頃、誰もが知る商品やイベントなどを手がけた著名なプロデューサーやクリエイティブディレクターを講師に迎えたブランディングやマーケティングに関する講座は、オンライン、オフラインともによく見かける。
一見、それらと横並びのようにも見える『DESIGNART研究所』。
でも紐解いてみると、一般的なブランディングに関する講座とはだいぶ中身が異なるようだ。
『DESIGNART研究所』は、2021年に開講した、国際ブランディングディレクターを養成する講座で、今年で2期目になる。
第1期のメンターとして、全10回の講座すべてに参加し、受講生の傍らで学びの伴走を務めた、笠間 健太郎さん(株式会社アーツ・アンド・ブランズ 代表取締役)に、『DESIGNART研究所』の特徴と魅力について聞いてみた。
■DESIGNART研究所公式HP↓↓↓
http://lab.designart.jp/
目次
“勝ちパターン”や“ノウハウ”ではない本質を追求するカリキュラム
『DESIGNART研究所』は、毎年秋に開催されるDESIGNART TOKYOを手がける、日本のアートシーンをけん引する“DESIGNART”が中心となって発足した、国際ブランディングディレクターを養成する講座だ。
講義は、繰り返された勝ちパターンやノウハウをレクチャーするものではなく、
それよりもっと本質的な捉え方や向き合い方を、各講師の実務経験や実績を通して受講生に提供される。
各界のトップランナーを講師に迎えた、全10回で構成されるカリキュラムの中身は、なんと、毎回1日がかりの7時間の講座だ。
午前10時から講師による講義が2時間、昼食後は4時間のワークショップと、講師やメンターとの個別相談会が1時間で、18時で終了となる。(オンライン受講は午前の講義のみ)
これだけを聞くと、なんと長い講座なのだとうと思うかもしれないが、受講生や講師からは
「あっという間だった!」との声が多い。
ワークショップでは、受講生は3~5名のグループに別れ、それぞれのグループで意見交換をして、解をまとめ上げ、グループごとにプレゼンテーションをする。
講師により、内容やスタイルが異なるワークショップは、第1期では、ひとつのブランドのプランを考えるものもあれば、実際に渋谷の商業施設や街に出るフィールドワークもあった。
最後の1時間は、受講生が直接講師やメンターと相談することのできる時間として、毎回設けられている。
単なる名刺交換タイムではなく、講義内容に関するより深い質問のほか、自身が取り組んでいるプロジェクトについてのアドバイスを求めたり、未来の在り方について話したり、受講生、講師の双方にとって有意義な時間となっている。
このカリキュラム構成が『DESIGNART研究所』の特徴のひとつでもあり、
この構成だからこそ提供できる、他の講座にはない価値があるようだ。
講壇に立つ機会の多い講師であっても、このカリキュラムに沿った講義では、これまでとは違った、よりリアルで双方向的な内容構成となっていく。
これらの『DESIGNART研究所』講義の独自の価値について、笠間さんの話をヒントに、もう少し紐解いて紹介したいと思う。
講師ごとに異なる「ブランディング」の10の多様なアプローチ
『DESIGNART研究所』は、国際ブランディングディレクターを養成することを目指し、10名の講師による全10回の講座で構成される
「ブランディング」を共通の軸に、10名のそれぞれ異なる捉え方、アプローチで展開される。
第1期のメンターを務めたメンターの笠間さんは、その依頼があった時、講師のラインナップに魅力を感じたという。
広告代理店で実務としてブランディングに携わってきて、スタンダードな知識はもちろん自分なりの考え方や実践経験はあるつもりでしたが、講師のラインナップを見ると、広告系だけはなく、デザインや建築、街づくりなどの広い領域のブランディングを手がける方々の名前があり、自分とは異なるブランドの捉え方が学べるのではないかと思いました。実際に講師によってブランディングに対するアプローチがそれぞれ異なっていたので、とても興味深かったです。また、講師からだけでなく、受講生のみなさんからも多くの刺激を受けました。
第1期では、活躍が注目されているクリエイティブディレクターや、街のランドマークとなる建物を手がける建築家、日本の職人の技と魂を世界へ届けるディレクター、地方創生と海外発信、イノベーション方法論など、多岐にわたるプロフェッショナルのトップランナーが講師を務めた。
「ブランディング」は、扱う対象によって考える時間も密度も異なる。
たとえば、広告であれば、その時間尺は半年から1年、建物は数十年、街であればさらに長くなるし、それに伴ってブランディングの捉え方、アプローチも変わってくる。
これについて、笠間さんは次のように話す。
広告会社が携わるブランディングは、比較的短い時間軸の中で、ビジュアルや言葉などの要素をコントロールしながらブランドを伝えて行くコミュニケーション領域の活動という側面が強い。
これに対して、例えば建築や街づくりにおけるブランディングは時間軸がずっと長い。
広い表現の場があって、そこに建物やインフラをつくり、その“場”に人が訪れたり暮らしたりすることで、その長い時間をかけてブランドがつくられていく。そこには広告とは違って送り手が簡単にコントロールできない領域が大きく、予想できない動きやコミュニケーションなどが必然的に起こる。あるべきブランドの姿に向けてそれとどう向き合い、どう成長させていくかなど、取るべき手段や時間的な尺度が、広告とはだいぶ異なります。
広告会社の視点からすると、広告の時間尺は半年~1年。ブランドは数年。しかし建築や街づくりは数十年、それ以上の時間尺でブランドを考える世界で、広告会社のアプローチとは異なる領域のブランディングと言えると思います。
「DESIGNART研究所』では10回の講義を通じて、10名の異なるブランディングについて、講義と実践的なワークショップを通じて学ぶことができる。
パターン化された勝ち方や知識、ノウハウの域では見ることのできない、人生をかけてブランドと対峙する姿勢など、ブランディングの本質について、10名の講師の“10の視点”がそこにあるのだ。
受講生 × 講師 × メンターの全員参加が作る大きな成長
『DESIGNART研究所』のもひとつの特筆すべき特徴は、受講生の成長だ。
これについては、受講生の感想からも多く聞くことができた。
ここで注目したいのは、「なぜ成長するのか」という点と「成長がなぜわかるのか」という点だ。
前者の問いについては、講師による講義内容の充実はもちろんだが、午後の部のワークショップも大きく寄与しているようだ。
4時間にわたるワークショップは、受講生は3~5名に別れ、グループワーク形式で進められる。
毎回異なるテーマや課題について、リサーチ、意見交換、コンセプト立案、ストーリー設計、プレゼンテーション、質疑応答など、毎回異なるメンバーとともに取り組む。
これを10回繰り返す中で、受講生ひとりひとりが成長していくのだ。
それは、ともに取り組む受講生同志でも感じるという。
10回の講義をメンターとして伴走した笠間さんは、ワークショップでは各グループをまわり、アドバイスをしたり、ディスカッションに参加する中で、その成長を目の当たりにしたという。
最初に比べて、回を重ねるごとに、参加者のみなさんの発想や思考が広がっていくのを感じました。個人のアイディアや発想力はもちろんですが、それを限られた時間の中でチームとしてひとつの提案にまとめ上げていくスキルの成長をすごく感じましたね。個人のスキルとチームとしてのスキル、その両方が成長していくのが見えた、ということです。
講師からのインプットだけでなく、いろいろな実務経験を持った受講生が意見を出し合い、インプットし合う、全員参加型の講座になっていたのがよかったのだと思います。
受講生のモチベーションが高かったことに加え、毎回の講師による講義が刺激として蓄積されていき、ワークショップでの受講生同士のコミュニケーションがさらに良い刺激になり、全員でお互いを高め合うことができたのではないかと思います。
ワークショップを通じて、個人の成長と、チームとしての成長に加え、受講生同士のコミュニケーションも活発化していた。
講座内のアイディアをアウトプットするプロジェクトが組成したり、講師の事務所や受講生の会社を訪問したり、受講生でチームを組んでアワードにエントリーして受賞するなど、講義の枠を超えて、受講生の活動が拡大している。
まとめ
『DESIGNART研究所』のカリキュラムやその価値について紐解いてみると、学びを提供するビジネススクールではあるのだが、“スクール”という枠にはまらない学びや体験があり、「研究所」と称しているのがしっくりくる。
講師から受講生へと一方向的に学びを提供するのではなく、講師と受講生とメンターが双方向的なコミュニケーションがこの講座の価値を高めている。
今わたしたちは、100年に一度の大変革期に直面し、その中で、ブランドは大きな転換点を迎えている。
『DESIGNART研究所』は、多くの人を夢中にさせるクリエイティブと、持続性のあるビジネスの両輪を先導できる力が今必要だと捉えている。
第2期の講師陣も、サステナブルトランスフォーメーションからメタバース領域まで、実に幅広く興味深いラインナップだ。
10名の異なるブランディングのアプローチに出会うことが出来るのだろう。
『DESIGNART研究所』のHPをぜひ見てみていただきたい。
■DESIGNART研究所公式HPはコチラ↓↓↓
どんな講義になるのか、期待が高まる。
個人的には、東京2020パラリンピック開閉会式ステージアドバイザーをつとめた栗栖 良依さん、日本酒を世界のお酒にまで高めた獺祭の桜井 博志さん、そして、今回お話をお聞きした笠間 健太郎さんの講義が特に気になっている。
■第2期の講師ラインナップはコチラ↓↓↓
第1期はメンターを務めた笠間さんは、今期は講師として登場する。
講師として登壇する思いを聞いてみた。
この講座のいいところは、ブランディングに対して多様な考え方やアプローチの仕方や実務経験のある講師が集まっているので、多様なブランディングの在り方を知ることができる。そこから多くの刺激やインプットをもらうことができるのが魅力なので、私なりの独自のブランディングのアプローチを受講生のみなさんに紹介したい。それが多様な講師陣の中で異なるアプローチのひとつとして刺激となれば。
ブランディングの多様なアプローチに触れることのできるこの講座は、実は登壇する講師の間でも、自分以外の講義に参加したいという声が多いそうだ。
講師同志が魅力を感じる講座は、受講生にとっても魅力満載だろう。
この魅力がブランディングに関わる多くの人に届けばと願っている。
■笠間 健太郎さんプロフィール
東京大学卒。電通にてマーケティング、ブランディングからクリエイティブ、キャンペーンまでをトータルに手がける統合コミュニケーション・ディレクターとして、幅広い業種の企業、ブランドを担当。
その中で「カルチャー・プロジェクト共創ブランディング」を発案し、トヨタ自動車、レクサスなど多くのブランドと実践。
2020年末に電通を退社しアーツ・アンド・ブランズを設立、その他さまざまな顔を持ってブランドと文化をむすぶ活動を展開している。
グッドデザイン賞、JACE イベントアワード最優秀賞受賞。
2022年3月Forbes JAPAN アート×ビジネス別冊「ART AS AN ATTITUDE -アート・ドリブンな未来入門-」を企画・監修
■『DESIGNART研究所』1期生の坂木茜さんのインタビューはコチラ↓↓↓